請求書に源泉徴収額の記載は必要?
源泉徴収の対象になる報酬であれば、源泉徴収税額を請求書に記載するのが通例です。
ただし所得税法上、源泉徴収税額を請求書に記載しなければいけないというルールはありません。法律上は任意です。
所得税法6条では、源泉徴収を行う義務は「報酬を支払う側が負う」ことが定められています。
そのため、報酬の振込金額は報酬を支払う側が負うもの(=取引先が源泉徴収をした後の金額)になります。
請求書に源泉徴収額を記載するメリット
請求書に源泉徴収額を記載する義務はありませんが、多くのフリーランスは源泉徴収額を記載しています。
その目的やメリットには、下記の3点があげられます。
- 源泉徴収額を計算する手間を省ける
- 所得税の支払い忘れのトラブルを避けられる
- 源泉徴収額を自分で把握できる
源泉徴収額を計算する手間を省ける
フリーランス が源泉徴収額を請求書に記載すると、発注者はそれぞれの報酬に対して、源泉徴収を計算する手間を省くことができます。記載された額を納税すれば良いので、複雑な計算をする必要がありません。
その一方、請求書に源泉徴収額が記載されていると、受け取った報酬に対してすでに源泉徴収が行われているとわかるため、フリーランス側の手続きも簡易化されます。
所得税の支払い忘れのトラブルを避けられる
フリーランスが源泉徴収額を請求書に記載すると、所得税の未払いによって課税額が増えるなどのトラブルを避けることができます。
所得税の納付期限に間に合わなかった場合には、納付加算税として所得税額の10%を徴収されることがあります。請求書に源泉徴収額を記載し、取引先に源泉徴収してもらうことで納税義務を果たし、未払いによって課税額が増えるというペナルティを回避することが可能です。
源泉徴収額を自分で把握できる
フリーランスが請求書に源泉徴収額を記載すると、自分自身が源泉徴収額を正確に把握することができるため、スムーズに納税が行えるメリットがあります。
税務上のトラブルを未然に防ぐことが可能でしょう。
源泉徴収の対象となる業務内容の一覧
源泉徴収は、対象になる業務とならない業務があります。フリーランスとして働く場合は、人によって業務の内容が大きく異なるため、源泉徴収の対象にならないケースもあるでしょう。
また、源泉徴収が必要な報酬・料金の範囲は、支払われる側が個人か法人かによって異なります。
請求書を作成する前に、それぞれの場合で源泉徴収の対象となる業務内容について改めておさらいしておきましょう。
個人の場合
- 原稿料や講演料など(ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくても良いことになっています)
- 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
※国税庁「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」より引用
法人の場合
- 馬主である法人に支払う競馬の賞金
※国税庁「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」より引用
源泉徴収がある請求書の書き方
源泉徴収がある場合の請求書の書き方を紹介します。
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請求書の項目
請求書の書き方に厳格な決まりはありませんが、下記の項目を記載するのが一般的です。
- 日付:請求書を作成する日付
- 請求書作成者の氏名や名称:自分の氏名または企業名
- 取引先の氏名や名称:請求相手の氏名または企業名
- 取引内容:提供した商品やサービスの内容
- 取引金額:提供する商品やサービスの金額
- 支払期日:支払い期限
- 振込先:自分の銀行口座情報など
取引金額の書き方
取引金額は、小計から源泉徴収を計算して記載し、最終的な合計金額も記載します。
- 小計:提供した商品やサービスの金額の合計を算出する
- 消費税:取引金額に対して課税される消費税を計算する
- 源泉徴収税:小計(消費税を含めない)から源泉徴収税を計算し、額を記載する
- 合計:小計に消費税を加えて源泉徴収税を引いて、合計金額を記載する
源泉徴収税額の計算方法
源泉徴収税額の計算方法は報酬の支払金額によって異なるので、それぞれの計算方法と注意点を解説します。
原則として、消費税を含めた金額が源泉徴収の対象となります。
源泉徴収額を計算する方法
1回あたりの請求額が100万以下の場合
1回の請求額が100万円以下の場合の計算方法は下記の通りです。
※求めた税額に1円未満の端数があるときはこれを切り捨てます
1回あたりの請求額が100万円超の場合
1回の請求額が100万円を超える場合の計算方法は下記の通りです。
※求めた税額に1円未満の端数があるときはこれを切り捨てます
源泉徴収額を計算する際の注意点・ポイント
源泉徴収額を計算する際は、下記の2点について押さえておきましょう。
・所得税率に復興特別所得税率が含まれる(2037年まで)
源泉徴収は一定の報酬などが対象です。また原則として、それにかかる消費税も源泉徴収の対象となります。
ただし、請求書において報酬額と消費税等の金額を明確に区分する場合は、消費税の金額を除いた金額のみを源泉徴収の対象とすることができます。
そのため、消費税については税抜価格として、分けて記載する方が良いでしょう。
また2037年まで、復興特別所得税が含まれる点も注意が必要です。
復興特別税とは、東日本大震災からの復興施策に必要な財源を確保するために課されることとなった税金です。
2013年1月1日から2037年12月31日の間は所得税率に復興特別所得税率が加算されます。
源泉徴収額を計算する場合、支払金額の0.21%(100万円を超える場合は支払金額から100万円を引いた金額の0.42%)が復興特別所得税率となります。
まとめ
フリーランスは請求書に源泉徴収額を記載するのが通例です。法律上義務ではありませんが、発注者とのトラブルを防ぐためにも記載しておくことをおすすめします。
なお確定申告の際には、源泉徴収により差し引かれている金額の申告を忘れないようにしましょう。確定申告する際に納付する税金の中には、源泉徴収で納付した分の税金は含まれていません。
確定申告の際に源泉徴収された金額を申告しなければ、二重で納税することになってしまいます。
今回紹介した内容を押さえて、請求に関するトラブルを防ぎましょう。