グロースハッカー(Growth hacker)とは?
グロースハッカー(Growth hacker)とは、Growth(成長)とhacker(目標を達成するために技術的な知識を駆使する人)を組み合わせた造語です。
技術的な知識を活用してマーケティング課題を解決しながら、新たな方法で会社や商品・サービスが成長する仕組みをつくる専門家のことを指します。
Facebook、Instagram、Airbnb、Netflix、Dropbox等の世界を代表するIT企業の成長を支えているのもグロースハッカーです。
2010年からシリコンバレーを中心に需要が高まった職業であり、最近は日本でも注目されています。
グロースハッカーは、利用者データを収集して分析し、顧客獲得や売上向上、ユーザー体験の改善施策を継続的に行います。従来のマーケティング手法にとらわれず、さまざまな手法やツールを活用してビジネスの成長を追求するのがグロースハッカーの役割です。
現在、グロースハッカーはスタートアップ企業だけでなく、伝統的企業でも積極的に採用されています。その理由は高額な広告宣伝費をかけずとも、ユーザー数や利用率を飛躍的に伸ばすことができるグロースハック手法にあるといわれているためです。
グロースハッカーの仕事内容
ここでは、グロースハッカーの仕事内容を具体的に解説します。
経営上の課題を明確化する
まずは、経営上の課題を明確化する必要があります。
経営上の課題を把握するためには、データ分析と適切な定量指標の設定が欠かせません。データを収集・分析し、問題や改善のポイントを特定します。その際、具体的なKPI(Key Performance Indicators)を定義し、現状のパフォーマンスを定量的に評価することが大切です。
目標と現状のギャップを確認し、そのギャップを埋めるためにどのような施策が必要かを洗い出すことで、課題を明確にすることができます。
真のユーザーニーズを分析する
時代とともにニーズは変わってくるため、ユーザーが真に望むことを突き止める必要があります。
ユーザーインサイトを知るには、定性分析と定量分析を行いましょう。
定性分析では、ユーザーインタビューやユーザー調査を通じて、顧客の意見や経験、期待、課題などを理解します。オープンエンドの質問をして、ユーザーのストーリーを聞き出し、感情や意見の背後にある要因を探ることがポイントです。
収集した質的データはテーマやパターンごとに分類し、共通のトピックや傾向、課題を抽出します。ユーザビリティテストやプロトタイプの評価などを通じて、ユーザーが製品やサービスをどのように使用しているか把握していきます。
定量分析では、サービスの利用率や、ページビューやクリック率、コンバージョン率などの指標を追跡し、ユーザーの行動やパフォーマンスを定量的に評価します。
これにより、真のニーズとビジネス目標の間にあるギャップや改善点を特定することが可能です。
ニーズをもとにプロダクトを改善する
真のユーザーニーズをもとに、商品やサービスを改善します。
ユーザーのニーズは多岐にわたるため、改善すべき項目を優先順位付けする必要があります。重要度や影響度、実現可能性などの観点から優先順位を設定し、改善策を段階的に実施していくのがポイントです。
改善後もWEBの解析ツールやA/Bテストなどを行いながら、試行錯誤します。ときにはSNSなども活用して、プロダクトをグロースさせていきます。
マーケティングコミュニケーションの改善を行う
マーケティングコミュニケーションとは、市場(マーケット)に存在する顧客と自社商材を接触させる一連の活動のことを言います。
グロースハックにおけるマーケティングコミュニケーションでは、サービスの各成長段階で重要な指標を示すAcquisition、Activation、Retention、Referral、Revenueの頭文字でAARRR(アー)というフレームワークを使うのが一般的です。
海賊があげる声に似ているのでパイレーツメトリクスとも言われ、プロダクトの成長を促進するための戦略や施策を立案する際に活用されます。
AARRRの各ステージと指標は以下の通りです。
1. Acquisition(獲得)
新しいユーザーを獲得することを目的としたステージです。インターネット上で新しいユーザーを獲得するには主に以下の8つのチャネルが有効です。
・SEO
・SNS (Instagram、Twitter など)
・Email(メールマガジン)
・動画(YouTube、TikTok など)
・検索広告
・ディスプレイ広告
・アフィリエイト広告
・PRサイト
上記から、自社サービスやターゲットユーザーとマッチするチャネルを選びます。アクセス数とコンバージョンレートを高めるためには複数チャネルを利用し、相乗効果が生まれるようにしていくことが重要です。
この段階では、Webサイトやアプリへの訪問者数(Unique Visitors:ユニーク訪問者数)や ユーザーがWebサイトやアプリにアクセスする経路やチャネル(Traffic Sources:トラフィックソース)を追跡します。
2. Activation(活性化)
新規ユーザーをアクティブなユーザーに転換することを目的としたステージです。
新規ユーザーが特定の行動(例:アカウント作成、初回ログイン)を完了する割合(Activation Rate)を計測します。メールマガジンや公式LINEを用いてユーザーの教育をしていくことが効果的です。
3. Retention(定着)
ユーザーを継続的にエンゲージさせることを目的としたステージです。
特定の期間内に再利用されるユーザーの割合(Retention Rate:活性化率)や 特定の期間内にユーザーが離脱する割合(Churn Rate:離脱率)を計測します。
商品やサービスの質を維持しつつ、定期的に買いたくなる仕組みを作ることが大切です。
4. Referral(紹介)
ユーザーがほかの人にプロダクトを紹介することを目的としたステージです。
ほかのユーザーへの紹介割合(Referral Rate:紹介率)を計測して、他者に紹介したくなるサービスになっているかを確認します。紹介割合などを導入し、紹介者にもメリットを出すことでサービスの認知度が広がります。
5. Revenue(収益)
収益を生み出すためのステージです。
ユーザーごとの平均収益(Average Revenue per User:ユーザー当たりの平均収益)や特定のアクション(例:購入、サブスクリプション)に至るユーザーの割合(Conversion Rate:変換率)を計測します。
購入ページまでの導線、LPなどはABテストを実施し、常に改善させていくことが大事です。また、商品単価は適正か、なども検討します。
グロースハッカーは年収1,000万円超えも目指せる
グロースハッカーはまだ新しい職種であり、年収の幅はスキルによって広がりがあります。
未経験グロースハッカーの年収は300~400万円、経験や能力次第では年収レンジ450~1000万円、600~1200万円といった募集もあります。
IT業界は現在も深刻な人材不足で、将来は人材不足が現状よりもさらに拡大すると懸念されており、年収増が見込まれます。
グロースハッカーになるには?
グロースハッカーに必要なスキルを知り、習得することで、データと実験に基づいたマーケティング施策やプロダクト改善を行い、ビジネスの成長を実現することができます。
グロースハッカーになるには、以下のスキルや知識が必要です。
・Webマーケティング
・アクセス解析の経験、スキル
・SEO、コンテンツマーケティング
・コンバージョン率改善(CRO、LPO)の経験、スキル
・真のニーズやインサイトを把握する思考のロジック
・アイディアを実行できる技術
グロースハッカーになるためには、小規模であってもメディアやサービスのグロース経験を積むことが大切です。
現在エンジニアとして働いている方向けに、これらのスキルを身につけてグロースハッカーになるための方法をご紹介します。
副業でマーケティング経験を積む
副業でWebサービスやWebメディアをつくり、Webマーケティングを通して利益を生み出す経験をすることが大切です。
自分で立ち上げたメディアであれば、自身で試行錯誤することができます。たとえ成果が出なくても自分の範囲内で責任をとれるため、何度でも挑戦することが可能です。
リスクはないものの、独学で学ばないといけないので、スキルを身につけるのに時間がかかるのがデメリットといえます。
中小企業でWebマーケター(一人部署)になる
中小企業やベンチャー企業でWebマーケティングの担当者になれば、サービスをグロースさせる経験を積むことができます。一人部署であればマーケティングに関わるすべての仕事を任されるので、幅広いスキルが身に付きます。
社長直轄だと経営に必要な実行力や判断力などの考え方を学びやすいため、スピーディーに成長したい方にはおすすめです。
グロースハッカーを募集している企業に応募する
グロースハッカーを募集している企業で働けば、最も早くグロースハッカーになれます。
ただし、求人を出している企業の多くは即戦力となる経験者を採用したい傾向にあるため、未経験者が採用される可能性は低いでしょう。
また、社内でグロースハッカーに精通している社員がほぼいないことから、自身でスキルを磨き続ける必要があります。
Webマーケティングベンダーへ就職する
Webマーケティングの仕事の中でも、実際の対策を行うWebマーケティングベンダーに就職すれば、仕事をしながら実務経験を積むことができます。
SEO対策、SEM、ソーシャルマーケティング、LPO対策などのWebマーケティングの実働を専門にしたベンダーであれば、実践で活かせるスキルが身に付けられる可能性があります。
まとめ
グロースハッカーは、ITの手法を用いて自社の製品やサービスの改善を実行し、事業の成長を促進する専門家です。
グロースハッカーになるには、マーケティング全般のスキルが必須です。自社メディアを運営したり、Webマーケターとして自身で成長したりするなどして、自身でグロースさせた経験を積めるようにしてキャリアを歩んでいきましょう。