インターネット黎明期の1998年にIT業界に飛び込み、以来エンジニアとして第一線で活躍し続けている図師さん。現在は、これまで培ってきた豊富な知識やノウハウをセルプロモートの若手たちに伝えるなど、後進の育成にも力を注いでいます。今回は、IT業界に衝撃を与えた出来事の「時代の目撃者」でもある図師さんに、数々の興味深いお話を聞きました。
業界に衝撃を与えた、大規模システム障害に遭遇。
──IT黎明期に、業界に飛び込まれたきっかけを教えてください。
大学は法学部で、もともとは公務員志望でした。ところが在学中に試験に落ちてしまったので、「就職浪人をしながら、生活のためにアルバイトでもしよう」と雑誌で探しているうちに出会ったのが、コンピューターの会社だったのです。アルバイトをするつもりが、その会社が正社員募集だったので、流れで就職することに。そこは今でいうSESの会社だったのですが、ある銀行のプロジェクトに参画し、汎用機でCOBOLとPL/Iの言語を使ってシステム開発をしていました。
──その案件では、IT業界を賑わせた出来事を目撃されたそうですね。
黎明期から携わっていることもあり、いろんなことを体験してきました。なかには、世間の注目を集めるような大規模システム障害に巻き込まれたことも。クライアント先のことなので詳しい話は省きますが、ちょうど私が担当していた領域で後に大問題になる箇所を発見したのです。そして、システム障害が起こったあとはリカバリー対応に力を注ぎ、大体落ち着くまで半年くらいかかった思い出があります。ただ、この当時は大変だったこともありましたが、今となってはさまざまな経験を積むことができたと感じています。
例えば、COBOLとPL/Iなどを用いてソースコードを書いてコンパイルした結果、エラーメッセージが表示されたとき、全部英語で出てくるのです。今なら翻訳ソフトがありますが、あの頃は頭を抱える事態です。当時は「汎用機マニュアル」が存在したので、本を読み解きながらエラーを解析していました。今は効率化されてシームレスに解決する術があり、非常に便利になっています。その反面、あの時代を懐かしむ気持ちもありますね。
──その後、大手損保会社の社内SEとしてご活躍されています。
社内SEとして、PL・PMを担当していました。それまでのキャリアでもPLまで任せてもらえましたし、銀行の合併を経験するなど振り返ると「歴史的な局面」に立ち会うという幸運に恵まれました。一方で、客先常駐ではどうしても「やれる範囲が限られている」という葛藤があったのです。社内SEの場合は、情報量や扱える範囲の広さが違うので、やりがいは大きかったですね。
要件定義の「前段階」から携われるやりがい。
──社内SE時代の「仕事の面白さ」はどんなときに感じましたか?
例えば「帳票システムが必要」といった場合、社外のエンジニアであれば「開発が決まった状態」からのスタートになります。しかし、社内SEはその前の「どんな課題があり、なぜ求められているのか?」の段階から加わることができるのです。いわば「要件定義の前の段階」から参画できるのが、エンジニアとしての醍醐味でした。ちなみに社内SE時代にも業界を震わせた出来事があり、コア部分の処理を担当。想像を超えた体験のつきないエンジニア人生です(笑)。
──セルプロモートにご入社されたきっかけと、当時の感想を教えてください。
実はありがたいことに、全国のいろいろな会社からオファーをいただいていました。そんななかで当社を選んだのは、本当のところ「なんとなく」です。SESの企業であれば、どこに配属されるかによるので、企業によってあまり変わりないだろうと考えていたのです。しかし、エンジニアの話を真摯に聞いてくれたり、自分のやりたいことを選択できるように配慮してくれたりする社風に触れ、好感をもちました。
実は、オフィスに入って最初の感想は「こんなに若い方が多く、イケイケな雰囲気で大丈夫だろうか?」と不安を感じたのです(笑)。それもすぐに、一人ひとりと関わるうちに世代を気にしない社風があるとわかり、居心地の良さを感じるようになりました。
──これまでのキャリアを活かし、「マスター」としても活躍されています。
「マスター」として、採用時の面接に同席して助言したり、社内研修をしたりしています。例えば先日、ライトニングトークに登壇して「PL・PMに求められる資質や、具体的な行動の仕方」について講義しました。技術力は努力で身に付きますが、PL・PMに求められるのはコミュニケーション能力や調整力になります。そのため「普段の立ち振る舞いが重要」といったことをお伝えしていますね。
あと、開発担当者は「依頼が発生してから、作業をする」のでどちらかというと受け身のポジションになりますが、PL・PMになると自分から依頼する立場になるので、課題に対して解決方法を立案して、カタチにすることが求められます。そのため、思考回路を能動的に切り替え「エンジニアを指揮し、マネジメントするメンタリティ」が大切であることをお話ししました。
「マスター」という役割は当社に入って初めての経験ですが、これまで培ってきた経験やスキルを、自分が引退するまでに伝えきりたいという気持ちです。また、SESはどうしても1人でプロジェクト先に配属されることも多いので、こうした教育の場は不可欠だと認識しています。
セルプロモート独自の環境や文化が、若手の急成長を後押し。
──現在は、損保会社のPMOに。さらに当社のエンジニアの教育係もされているそうですね。
当初は私1人で3ヶ月ほどで終わるプロジェクトだったのですが、ちょうど入れ替えなどのタイミングが重なりました。稼働率や工数などを鑑みると、長年の経験から「人員が足りない」ことが試算できたので、当社のエンジニアのアサインを提案。それが通って、今は私も含めて4人体制で臨んでいます。
教え方は堅苦しくならないよう、フランクさを重視しています。オンラインで画面共有をしながら、技術面をレクチャーすると同時に「経験が浅くてもプロとして見られているので、先回りして行動する方がいいよ」といった心構えのところも、柔らかく伝えるよう心がけています。あと、教育でいうと、クライアント先に頼まれて勉強会も行いました。
──図師さんから見た「セルプロモートの魅力」は何でしょうか?
日本には無数のSESの業態の会社がありますが、この業界に長く在籍しているとエンジニアの意向とは関係なく、会社の売上を伸ばすことに躍起になる企業を多く見てきました。しかし、当社の場合はタレマネという制度もあり「じっくりと話を聞いてくれる」「どういうキャリアを目指し、どんなスキルを身に付けたいのか?」に寄り添い、希望に沿ったプロジェクトで活躍する道が開けています。適切なサポート体制があるので、「望んだスキルアップにつながる」「成長が速い」のが魅力だと感じます。
──今後のキャリアビジョンについて教えてください。
自社サービスの開発に挑戦してみたい気持ちがあります。頭を捻って新たなサービスを考えてリリースすることに対して、個人的にもワクワクしますし、会社としてもSES以外の収益の柱が合ったほうが可能性が広がると感じるからです。一方で今後のキャリアについては、コンサルタントにも興味があります。今の知識や経験を活かして企業に対して問題解決に向けた提案ができればと考えています。