今回は楽天グループで部長を務めた後、セルプロモートのボードメンバーとして手腕を発揮するCOOの谷内さんと、同じく楽天グループ出身で現在はセルプロモートの自社プロダクトの開発チームを率いると同時に、タレントマネージメント(タレマネ)としてエンジニアの採用にも尽力するなどマルチに活躍されている笹森さんとの対談を開催。谷内さんと笹森さんがともに11年を駆け抜けられた楽天時代の思い出、その経験が今どのように役立っているか、そしてセルプロモートの未来への展望などを語ってもらいました。
熱量あふれるマネジメント。現場から慕われるエンジニア。
──お二人は楽天時代、上司と部下の関係だったと伺っています。お互いの当時の印象を教えてください。
谷内さん(以下、谷内):当時は開発部の課長を務めており、既にいくつかのサービスをマネージメントしている中で、「ゴルフ予約サービスも担当してほしい」と言われてお会いしたのが当時チームリーダーだった笹森さんでした。任されたサービスが国内トップシェアを誇っており、さらにサービスも拡大中だったことから、業務の5割程度の時間を同サービスに充てるようになり、その頃から笹森さんと徐々に親密になりました。スマートな雰囲気に反して、泥くさく現場を巻き込んでいく能力に優れ、「エンジニアたちから慕われている方」という印象を受けていました。
当時、サービス開発をリードする人間には技術面だけでなく担当サービスへの「パッション」を持っていてほしいと考えており、そのメンタリティを持っているエンジニアだと感じましたね。大きなサービスだったので笹森さんは社内だけでなく社外のオフショア開発もみていました。その中で「社内エンジニア比率を上げていく」という方針を当時新たに掲げました。開発スピードを落とさず、かつサービスに関わる全メンバーのモチベーションを落とさず進めることは決して簡単ではありませんでしたが、そのプロジェクトを一緒に推進し、やり遂げたことは思い出に残っています。
笹森さん(以下、笹森):当時、谷内さんとお仕事でかかわらせていただきメンバーと積極的にコミュニケーションを図り、現場にコミットして「人間関係を軸にチームを形成してくれている」という雰囲気をひしひしと感じたのです。そして関係性が深まるにつれて、小さな組織から大所帯までをまとめ上げていく「組織づくり」の敏腕ぶりに舌を巻きました。チーム全員の方向性を合わせて、なおかつ1人ひとりに腹落ちさせるというマネジメント手法です。
谷内:複数のサービスの責任者をしていたので、全ての現場にいつもコミットすることは難しい状況下でした。その中で自分も含めて配下のマネージャーやリーダーには「苦しい中でも逃げないか」を見ており、それができる人間を信頼して組織作りを進め、笹森さんもその1人でした。世の中、「問題も何もなく、すべてがスムーズに展開する」ほど甘くありません。問題が起こったり、壁に直面したりしたとき、トップが逃げるようなことがあれば、それを見ていたメンバーたちに伝染し、「逃げ癖」がついてしまうのです。楽天の文化でもある「やりきる」ことは本当に大切な価値観だと感じていました。
前職で培ったノウハウや知見を、今に存分に活かす。
──当時、特に印象に残っているエピソードについてお聞かせください。
谷内:まだ現代のようにAIが発達していない時代でしたが、先駆者的な存在のAIサービスが当時ありました。そのサービスと楽天の商材をかけあわせたプロトタイプを作る社内で競うハッカソンが有り、私と笹森さんは同じチームで開発を2週間くらい行いました。最終はプレゼンAIを提供している企業の重役が見守る中、ゴルフとAIを掛け合わせたデモを行い、見事優勝したことがあります。全員が忙しい通常業務の間を縫うように時間を捻出して成し得た結果だったので、非常にうれしかったですし、何よりプロダクトができていく過程が楽しかったですね。みんなでお祝いで高級焼肉を食べに行ったのは、今でも時折思い出すことがあります(笑)。
笹森:そのプレゼンは私も印象に残っていますね。谷内さんはプロダクトマネージャーでエンジニアは私だけというチームでしたが、私が現場に追われているようなときに、率先してプロダクトのことを考えて行動してくれたことも印象的でした。
あとは、1週間に渡るインターンのイベントも脳裏に残っています。25名くらいの学生が参加し、メンターがサポートしながら進めるのですが、「ゼロから1つのプロダクトを開発する」という難易度の高い内容でした。谷内さんたちと一緒に取り組んだのですが、上の熱量が学生たちに伝わったのか、最後は睡眠時間を削るほど熱中し、開発に没頭してくれたのです。その中から楽天に入社した学生もいました。
谷内:熱量については意図的ではありませんが、私自身「指示するだけは面白くない」というマインドがあることと「現場の感覚を持たなければ、プロジェクトの推進は難しい」という考えがあるので、一緒にチームを活性化させるという今のスタイルを貫いています。
──前職で培ってきた経験で、今の業務に活かされているのはどんなところでしょうか?
笹森:「周りに対して何ができるか?」といった、チームへの貢献を第一義に据える風土が根付いていました。そこは私も業務で重きを置いていたところだったので、今でも「支え合うチームであり続けるためには、何が必要か」を思考し、行動に移すことを実践しています。技術面では、大規模サービスの運用、アプリケーションやインフラなども経験でき、多岐に渡るノウハウを得られたことは大きな学びでした。
谷内:スタートアップ規模の小さなプロダクトから、国内シェアトップクラス、さらには海外マーケットをカバーするサービスに至るまで、幅広い案件を担当してきました。また、サービスの買収からPMI(Post Merger Integration)、そして売却の両方を経験したことが、現在のさまざまな意思決定に大いに役立っていると実感しています。さらに、三木谷さんをはじめとする国内トップクラスの視座を持つ役員の方々と頻繁にミーティングを重ねてきた経験は、初めて経営者としての役割を担う私にとって、非常に大きな学びとなりました。あとは楽天といえば英語ですが、もともと英語嫌いであった自分が今では英語でドラマ見るくらい好きになったことも感謝しています。セルプロモートには海外出身メンバーもいて、彼らと英語でコミュニケーションがとれることは本当にマネージメントとして非常に大切です。
ベンチャーならではの「強み」を徹底的に最大化。
──今後、セルプロモートをどのような組織にしていきたいですか?
笹森:セルプロモートに入社した当初から「これまでのキャリアを活用しつつ、エンジニアに貢献する」ことを念頭に置いて活動しています。まずは、エンジニアが成長・活躍できる場を広げるために、受託や自社プロダクトの開発などに着手しているところです。ただ、最近思うのは、営業やそれ以外の内勤メンバーに対して「実はエンジニアって、こんなことを思考しているんですよ」といった特性を伝えていくことも大事だということです。それが「技術を活用して課題を解決する」という“エンジニアリングの本質”の理解に繋がるのではないかと、思い描いています。私1人でできることは限られているので周りの協力を仰ぎ、みんなが全員に貢献する組織にしていきたいですね。
谷内:開発・クライアントワーク事業の両方を管掌している役員としては、今後は自社プロダクト・自社開発の比率をもっと上げていきSES事業との売上比率を「5対5」までに高めていきたいと考えています。そのために代表の林とよく話しているのが「エンジニアの成長」です。高学歴・高経歴のエリートではなくとも、セルプロモートでの様々な経験を通して成長し、輝いてほしいという理念があります。クライアント様に対しても、今は社名がまだ世に知られていない企業だとしても、当社のテクノロジーやエンジニアを通して「プロモート」させていただきたい。エンジニアとクライアント様、両者に“光を当てるプロモート”を提供できる会社・開発体制・エンジニア組織を目指します。
我々はすでに上場を視野に入れていますが、まだまだベンチャー企業であることに変わりはありません。我々が競争に勝つためには、「スピード」が不可欠です。ベンチャーらしく、行動の「量」にスピードを掛け合わせ、それを「質」に転換させていくことこそが、経営者の役目だと考えています。過去の楽天での経験からも、現場が泥臭く、そして人間的に魅力のある集団こそが強い企業であると確信しています。その実現のため、セルプロモートに集った「ポテンシャル人材」の引き上げを、経営者の一人として全力で進めていきます。