フリーランス保護新法とは?施工後に何が変わる?

フリーランスとして働く人の労働環境保護を目的として、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(フリーランス保護新法、フリーランス保護法、フリーランス新法)が2023年5月に公布されたました。本記事では、この法律の概要と施工後に予想される変化について詳しく解説します。


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フリーランス保護新法とは?

フリーランス保護新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は、自由契約で働くフリーランスの労働環境を守るために制定された新しい法律です。

これにより、フリーランスとして働く人々の労働条件が改善され、より安定した労働環境が提供されることを目的としています。

フリーランス保護新法の適用対象

フリーランス保護新法の適用対象者は、企業や個人事業主と契約を結んで業務を行う全てのフリーランス労働者で、発注事業者からフリーランスへの「業務委託」(事業者間取引)に対して適用されます。

特定の業種や契約形態に限定されず、幅広いフリーランス、具体的には、デザイナー、ライター、プログラマーなど、特定の業務を請け負う個人が対象となります。

  • フリーランス…業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの
  • 発注事業者…フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの

※一般的にフリーランスと呼ばれる人には、「従業員を使用している」「消費者を相手に取引をしている」人も含まれる場合もありますが、これらの人はこの法律における「フリーランス」にはあたりません

新法が制定された目的

フリーランスとして働く人々の数は増加していますが、その労働環境は必ずしも安定しているとは言えません。不当な契約や報酬の未払い、劣悪な労働環境などが問題となっていました。

新法が制定された目的は、これらフリーランスの労働条件を改善し、適正な報酬の支払いを保証することです。これにより、フリーランスとして働く人々が、不当な契約条件や報酬未払いから保護され、安定した収入を得られるようにし、より良い労働環境を提供することを目指しています。

  • フリーランスとして働く人と企業などの発注事業者の間の取引の適正化
  • フリーランスとして働く人の就業環境の整備

いつから施行?

フリーランス保護新法は、2023年4月28日に国会で可決され、同年5月12日に公布されました。2024年11月1日に施行されます。

これにより、フリーランス契約において新しいルールが適用されることになるため、この日に向けて企業やフリーランスの双方が準備を進める必要があります。

フリーランス保護新法案の内容

フリーランス保護新法には、フリーランスの労働環境を改善するための具体的な措置が含まれています。

フリーランス保護新法の全体の内容としては、契約の透明性、報酬の安定性、労働環境の改善が主な柱となっています。これらの規定は、フリーランスが公正な労働条件で働けるようにするためのものです。法律の施行により、フリーランスの権利が一層強化されます。

発注事業者が満たす要件に応じてフリーランスに対しての義務の内容が異なりますので、具体的に以下の表を基に具体的な義務項目をご確認ください。

発注事業者 義務項目 フリーランス
・フリーランスに業務委託をする事業者
・従業員を使用していない
※フリーランスに業務委託するフリーランスも含まれます
1 ・業務委託の相手方である事業者
・従業員を使⽤していない
・フリーランスに業務委託をする事業者
・従業員を使用している
1,2,4,6
・フリーランスに業務委託をする事業者
・従業員を使用している
・一定の期間以上行う業務委託である
※「一定の期間」は、3は1か月、5,7は6か月
※契約の更新により「一定の期間」以上継続して行うこととなる業務委託も含みます
1,2,3,4,5,6,7

 

義務項⽬ 具体的な内容
1 書面等による取引条件の明示 業務委託をした場合、書面等により、直ちに、次の取引条件を明示すること

「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」「発注事業者・フリーランスの名称」「業務委託をした日」「給付を受領/役務提供を受ける日」「給付を受領/役務提供を受ける場所」「(検査を行う場合)検査完了日」「(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項」

2 報酬支払期日の設定・期日内の支払 発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬日払期日を設定し、期日内に報酬を支払うこと
3 禁止行為 フリーランスに対し、1か月以上の業務委託をした場合、次の7つの行為をしてはならないこと

・受領拒否 ・報酬の減額 ・返品 ・買いたたき ・購入・利用強制 ・不当な経済上の利益の提供要請 ・不当な給付内容の変更・やり直し

4 募集情報の的確表示 広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、
・虚偽の表示や誤解を与える表⽰をしてはならないこと
・内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと
5 育児介護等と業務の両立に対する配慮 6か月以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければならないこと

(例)
・「子の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更すること
・「介護のために特定の曜日についてはオンラインで就業したい」との申出に対し、⼀部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること など
※やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、配慮を行うことができない理由について説明することが必要

6 ハラスメント対策に係る体制整備 フリーランスに対するハラスメント行為に関し、次の措置を講じること

・ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
・相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 など

7 中途解除等の事前予告・理由開示 6か⽉以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、
・原則として30日前までに予告しなければならないこと
・予告の日から解除日までにフリーランスから理由の開⽰の請求があった場合には理由の開示を行わなければならないこと

※中小企業庁が発行している新法周知用リーフ(PDF)を参照しております

フリーランス保護新法によって何が変わる?

新法の施行により、フリーランスの労働環境に様々な変化がもたらされます。

契約の透明性向上

契約内容が明確に記載されることで、フリーランスとの契約において透明性が大幅に向上します。これにより、契約上のトラブルが減少し、安心して業務に取り組むことができるようになります。

報酬の安定性確保

報酬の支払い期限が明確に定められることで、フリーランスの報酬が安定します。これにより、収入の見通しが立ちやすくなり、生活の安定にも寄与します。また、未払いのリスクが減少するため、安心して業務に取り組むことができます。

労働環境の改善

労働環境の改善措置が求められることで、フリーランスとして働く人々の労働環境が大幅に改善されます。

適正な業務量の設定や、健康・安全に配慮した労働条件が求められるため、過労やストレスの軽減が期待されます。これにより、フリーランスの働きやすさが向上します。

フリーランス保護新法の課題点

新法には多くの利点がありますが、同時にいくつかの課題点も存在します。

法律の適用範囲の限界

フリーランス保護新法には、適用範囲に限界があるという課題があります。全てのフリーランスが同様の保護を受けられるわけではなく、特定の業種や契約形態によっては適用が難しい場合もあります。これにより、一部のフリーランスが保護の対象外となる可能性があります。

実施状況のモニタリング

新法の実施状況をモニタリングすることも重要な課題です。法律が適切に運用されているかを監視し、必要に応じて改善措置を講じる必要があります。これにより、法律の効果を最大限に引き出すことができます。

法律改正の必要性

法律が施行された後も、社会の変化やフリーランスの働き方の多様化に対応するため、法律の改正が必要になる場合があります。フリーランスの実態に即した柔軟な法律改正が求められます。これにより、フリーランスの権利保護が継続的に強化されます。

まとめ

フリーランス保護新法は、フリーランスとして働く人々の労働環境を守るために制定された新しい法律です。この法律の施行により、契約の透明性や報酬の安定性、労働環境の改善が期待されます。

しかし、法律の適用範囲には限界があり、実施状況のモニタリングや法改正の必要性も課題として残ります。フリーランスとして働くことを検討している方にとって、この法律は重要な検討材料となるでしょう。安心して働ける環境を整えるために、この新法の内容を十分に理解し、自身の労働環境を見直すことが大切です。